盲点を突く、あるいは裏をかく競馬
世の中ライブドア・ショックである。経済には興味ないうえに知識もないので、個人的には「ふぅ〜ん」とか「ああ、やっぱり出る杭は打たれるのね」くらいの感想しか持たないが、競馬ファンにとっても案外と無視できない出来事なのかも知れない。
堀江氏の『カネによる世界征服計画』がここで頓挫すれば、ライブドアがその資金力・影響力を行使しようとしている公営競馬の運営にも影響が出てくることだろう。また、馬主の中にはライブドア株で大損を被った(あるいは今後被る)人だっているはず。泡のごとく消えた相当額は、本来なら馬の購入や飼い葉代に充てるカネだった可能性もある。
事がライブドアと関連企業だけにとどまっていればいいが、同じようにヤバイことをやっちゃっている証券とか他のIT企業とか投資グループとかがズルズルと吊るし上げられ、せっかく上昇気配にある株価全体や日本経済にまで影響を及ぼすようなら、なおのこと問題だ。カネが世の中に回らなくなり、馬も馬券もますます売れなくなり、競馬衰退のスピードは加速することだろう。
ま、状況がさして進展しないうちからあまり悲観的になっても仕方ないので、ライブドアの手法から「自分にとってプラスに出来るものはないか」と考えてみる。
どうやらこの企業、法律の盲点を突いたり裏をかいたりして巨大化してきたらしい。実はコレ、競馬ファンなら日常的にやっていることであるはずだ。
突出した1番人気がいれば、なんとかその馬の敗因を探そうとする。それが無理なら、せめて2着や3着に突っ込んできそうな穴馬を見つけ出そうと苦労する。あるいはハナっから、人気薄から軸馬を探し当てるチャレンジ。いずれも泣きを見ることが圧倒的に多いのだが、誰にだって経験のあることだろう。
こうした作業において参考にされるのがオッズだ。オッズに逆らうような予想や買い方=「みんなが『勝つ』と思っている人気馬が『負ける』と考える」とか「誰も見つけられなかった穴馬を探す」とか「他人が軽視している馬を軸にする」という方法論は、ある意味で盲点を突くor裏をかく行為といえるはずである。
この方法論を突き詰めたのが、須田オッズ(仮称)やRATE BUSTERだ。
須田オッズというのは、さる座談会で須田鷹雄氏が述べたもので、たぶん未完成。またRATE
BUSTERは『競馬最強の法則WEB』で展開されている馬券術だ。
どちらも基本コンセプトは同じ。「もし出走馬の能力を完全に比較・把握できて、それをもとに各馬の勝つ確率や2着以内に来る確率・3着以内に来る確率を算出できて、『本来あるべきオッズ』を導き出せたとする。ならば、その『本来あるべきオッズ』と『実際のオッズ』とを見比べて、“ついている”買い目だけを買う」という方法論である。
話を簡単にするために2頭立てのレースを考える(控除率は無視)。Aの馬とBの馬の能力を比較して、実力伯仲、どちらが勝つ確率も50パーセントずつであると算出できたとしよう。この場合、AもBも単勝オッズは2倍になるはずだ。ところが実際には馬券の売れ行き(シェア)に差があって、Aが2.5倍、Bが1.6倍になっているとする。どちらを買うべきか。当然A。勝つ確率が同じなら少しでもオッズが“ついている”馬を買ったほうがいいに決まっている。
こういうレースが10回あれば、AとBが5回ずつ勝つはずだ。全レースでAに100円ずつ投じれば、10レース終了時点での投資合計は1000円、的中5レースで、払戻し合計は250円×5=1250円。つまり、確実に勝てる計算。Bを買い続ければ、やはり的中は5レースだが、払戻しは800円にしかならない。
これを単勝だけでなく、馬連や3連複や3連単にまで広げて「本来あるべきオッズよりも高いところだけ買い続ける」というわけである。まさしくオッズに逆らう馬券術だ。
この方法論で問題となるのが「じゃあ、各馬の勝つ確率や連対する確率を正しく求められるか」という点。これについてRATE
BUSTERでは、作者独自の指数化理論で各馬の能力を分析・数値化し、その数値をもとに各馬の勝つ確率や連対する確率を算出、その確率から『本来あるべきオッズ』を導き出している。
カンのいい人ならお気づきのことと思うが、この方法論では、『実際のオッズ』は間違ったオッズ、ということを前提としている。多くの競馬ファンが、それぞれの方法論を駆使し、あるいは馬柱やトラックマンの印やスポーツ紙に掲載される情報などをもとにして予想を組み立てて馬券を購入した結果が『実際のオッズ』であるわけだが、そもそも各自の方法論や馬柱からの読み取り方が間違っているので『実際のオッズ』が『各馬の能力を正しく反映した、本来あるべきオッズ』と差が生じる、というわけである。
また、この方法論では買い目は「1−2、1−5、2−3、2−4、2−7,3−4、4−6、4−8……」などとバラバラになりがちだ。特定の馬や買い目だけが“売れ過ぎている”ことは、競馬ではよくある現象。逆に“売れなさ過ぎ”の馬・買い目も多いわけだが、それらは必ずしも一箇所にまとまっているわけではなく、オッズ板のあちらこちらに点在しているものだからだ。で、そういう買い目は多いから、この種の方法論では多点買いとなる。
ともかくも『本来あるべきオッズ』さえ正確に求められれば、これほど効果的な馬券術は他にないといえるはずだ。
なにもこの種の馬券術を競馬ファン全員が実践しなければならないというわけではない。というより、先に述べたように、誰もが知らず知らずのうちに実践していることなのだ。「Aの馬が人気になっているけれど、ぷぷぷ、みんなバカだなぁ、こんな馬が勝つわけないのに」とか「この馬、ここでは有力だと思うのに、こんなに人気薄なの?」という思いは、そのまんま、自分の中に構築された『本来あるべきオッズ』と『実際のオッズ』との比較なのだから。
つまり肝心なのは、「他人がやっていない(少なくとも、競馬ファンのトータルから見ればやっている人が少ない)予想理論」で、かつ「正しく各馬の能力や適性を把握できる予想理論」を取り入れたり開発したりすること。そうすることで、より正しく『本来あるべきオッズ』と『実際のオッズ』との比較も可能になるわけだから。「他人がやっていること」をなぞっているだけでは、いつまでたってもその人は『間違いだらけの、実際のオッズ』を作る立場に甘んじ続けることになる。
血統分析、スピード指数系の理論、レーティング、「こっちのコースで好走した馬は、こっちでも好走できる」というコース適性相関理論……、世の中でもてはやされている予想理論の多くは、「他人がやっていない(少なくとも、競馬ファンのトータルから見ればやっている人が少ない)予想術・馬券術」であり、たぶん、漠然と競馬新聞を見るだけの昔ながらの予想に比べて「正しく各馬の能力や適性を把握できる予想理論」であるはずだ。だからこそ、もてはやされるのである。
願わくば、たとえ一定の条件下のレース(たとえばダート1200m)だけでも通用する予想理論を打ち立てたいものだ。そうすれば、そのレースに限ってなら「ぷぷぷ、こんな馬が人気になってるよ」と笑いつつ、より儲かる馬券を買うことができるだろう。
で、思ったのだが、堀江氏ってこういう方法論がめっぽう得意なんじゃないだろうか。株と会社経営の世界ではちょっととやりすぎたせいか窮地に陥っているけれど、万が一、裸一貫からやり直さなければならないことになったら、予想屋・馬券師としてのリスタートを切ってみるのも悪くないんじゃない?