市丸博司のPC競馬ニュース ASADA
 第425回 2014.2.7

ソニーの「VAIO」が売却される

 みなさんニュースでご存じかと思われるが、ソニーのパソコン部門、つまりは「VAIO」が売却されることになった。これでVAIOがもうなくなる、というわけではなく、新会社のもとで存続されるとのことではあるが「ソニーのVAIO」としては先日発表された春モデルが最後ということになる。

 もう長いこと「VAIO」のブランドとは親しんできた気もするが、昔を思い出せば、ソニーとパソコンが結びつくイメージはあまりなかったもの。パソコンの登場からしばらくは、日本のパソコンメーカーといえば、NEC、富士通、シャープだった。その後「MSX」規格に家電メーカーが乗っかって多くの会社から発売され、ソニーもその中のひとつである(HitBit)。そして富士通が「FM-7」「FM TOWNS」の流れから大きく舵を切り、いわゆる「PC/AT互換機」の「FMV」を出してきたのが93年。Windows95が出たあたりから「Windowsが動けば良し」といった流れができあがり、Windows98発売前の97年に、ソニーが「VAIO」を投入。そして「PC-98」シリーズで圧倒的なシェアを誇っていたNECも、ついに「PC98-NX」を出すといった流れだった。

 あれこれ思い出すと、PC-8001のシリーズもFM-7もMZ-80も、それぞれいろいろ特徴があったと思うのだが、その後「差別化が難しい」と言わるようになったのが、「Windowsが動くパソコン」になってから。しかし、そんな中でソニーは初期の「バイオノート505」から、数多くの特徴的な製品を送り出てきた。中には商業的に「失敗」に終わったものもあるだろうが、売れたもの、売れなかったもの含めて、ニュースになるようなパソコンを出してきたのは確か。当方は今でこそ長いことVAIO SZを使っているものの、それ以前は、富士通のペン入力対応機「MC/30」や、東芝の薄型ノートを使っており、そう多くVAIOを語れるほどではないのだが、それでも「買ってみようか」と思わせる機種も少なからず存在したものだ。

 ちなみに、当方が現在使っているVAIO SZでひとつ特徴的だったのは、音声ファイルの「DSD」に対応していたことだ。この当時はSZにかぎらずいくつものデスクトップ、ノートが「DSD」に対応しており、CDの曲をDSD形式に変換して、あるいは後にはリアルタイムでDSD変換を行って、より良い音で聞けるという「売り」だった。もっとも、いくら「DSD」に変換しようとも、元の音がCDではどうしても限界はあり、最初からDSD形式で録音された音源がないかぎりは「ものすごく良い音」とはいかない。そのためか、その後のVAIOはこれに対応しなくなってしまい、いつかは復活してくれるのではないか、という期待をかすかに持ちながら現在に至る、という状態である。
 ただ、その「DSD」が埋もれた規格になってしまったかといえばそうではなく、最近「ハイレゾ」(昔は画面の解像度で使われたが)などという言葉を目にするようになってきた。必ずしもハイレゾ=DSDではないものの、ここ1〜2年ほどで逆に注目度は上がっており、DSD形式での音楽配信がはじまったり、DSDに対応する外付け音源が多く発売されている。そしてまた、ソニー自身(パソコン部門ではないのかもしれないが)がそういった機器を発売していたりもする。
 また、DSDにかぎらず、これらのVAIOはWAVEファイルでも、192KHz、24bitが再生可能だった。実は「CDからの変換」ではなく、最初から「良い音」で録音されてさえいれば、DSDではなくても、96KHzあたりで明らかに違う音だと認識できるもので、このVAIOはそれ本体で「ハイレゾ音源対応」。DSD以外の「ハイレゾ音源」配信サービスにも、そのまま問題なく対応できているのである。
 もちろん、そういう時代があと5年早く来ればVAIO売却とはならなかった、とは言えない。仮にソニー自身がハイレゾ音源の配信に力を入れていたとしても、再生対応はやろうと思えば他のメーカーでもできること。それで「ソニーのVAIO」が生き残ったとは限らないのだが、印象としては「ちょっと先を行きすぎた」とも言えるし、先を行くなら行くで、ソニーミュージックのコンテンツでなんとかならなかったのか、という思いはあったりする。

 と、過去を振り返っても、決まったものは覆らない(いや、この手の話は覆るケースもあるにはあるが)。ただ、幸いにしてこの一件、VAIOの終わりではなく、あくまで投資ファンドへの「売却」。海外展開などは縮小されるのだろうが、これでVAIOがなくなってしまうわけではない。これまで、VAIOがあったからこそ、他のメーカーから出てきた製品、というのもあったはず。開発に携わった方はさまざまな思いがあるだろうが、今後発売される新VAIOで、これまで以上に魅力的な製品を送り出してもらいたいものである。

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