市丸博司のPC競馬ニュース ASADA
 第48回 2006.5.26

中学の数学を思い出してみる(上)

 「こんなことやってて、将来いったいなんの役に立つのか」

 小学校ならまだしも、中学の頃の勉強について、こんなことを考えたことのある人も多いはず。そして事実、中学以降の勉強など「雑学の足し」程度にしかなっていないものがほとんどだろう。進む道によっては、わけのわからない数式が大事だったり、英語は欠かせなかったりもするものだが、必要なのは100学んだうちのうち1や2くらいだろうか。ただ、その100を学ばないことには、その人にとって将来重要になるかもしれない「1や2くらい」を知ることもできないので(少なくとも今のシステムでは)、もし中学生の方がこれを読んでいたら、面倒くさいのは諦めてしっかりと学んでおいて欲しい。いや、中学以降、テスト勉強はもちろんのこと、受験勉強すら家ではまったくしたことがなかった自分が言っても、なんの説得力もないのだが…。
 そんな勉強の中で、競馬ファンにとってちょっと役に立つかもしれないのが三角関数や円周率だったりする。予想コラムなどでも「皐月賞はコース取りが勝敗を大きく分けた」「○○は4コーナーで大外を周った距離損が最後まで響いた」などとという言い回しは良く目にするもの。また、そういったあたりを着目点とした予想を展開している人もいるようだ。特に今週は、皐月賞で大外をまわしたアドマイヤムーンやサクラメガワンダーを推す記事で、その手の話を多々見かけた。ただ、それを書いている側はともかく、読む側で「実際どの程度の距離損があったのか」をいちいち考えることは少ないもの。レースを見ていれば、「4コーナー手前で外から先頭に並んでいたのが、直線入り口では3馬身くらい後ろになってなあ」などと思うことはあっても、それで何メートル、何秒損した、などと細かいことまではあまり考えないものだ。さて、実際、どのくらいの損になっているのだろう。

 円の円周は2πr。これ、中学の数学ではなく小学校の算数だったような気もしないでもないが、ともかく、2×半径×円周率で円周は求められる。これを使うと…、仮にコーナー半径が100mだったとすると、2×100×3.14で走破距離は628m。5m外を周ったとすると2×105×3.14で659.4m。10m外なら2×110×3.14で690.8m。5m外なら31.4m、10m外なら62.8mの損になる。
  競馬場のコーナーは円とは異なり、1つのコーナーの中でもコーナー半径は異なっている。この計算式を競馬場にもそのまま当てはめていいのか、といえば違うような気もするのだが、実はなんら問題はない。上の計算を見るとわかる通り、内ぴったりと5m外の差は31.4m。そして5m外と10m外の差も31.4m。損をする距離は「どれだけ外を周ったか」にのみ左右され、コーナー半径はまったく関係ないのだ。実際、コーナーと直線で仮柵位置の変わらない中京の例を見ると、Aコースで1周1600m、5m外のCコースで1631mではプラス31mと、ほぼ計算通りの数字が出ている。現実的には、スタート直後より勝負どころでのロスの方が結果に響きやすいので、3コーナーからのコーナー2つで、5m外を周れば約15mの損、くらいに考えればいいかもしれない。
 では、15mの損とはいかほどか。上がり36秒0の競馬なら、36秒÷600mで1mあたり0.06秒。15mなら0.9秒、5馬身ほどだろうか。上がり34秒なら同様に約0.85秒。先に挙げた「4コーナー手前で外から先頭に並んでいたのが、直線入り口では3馬身くらい後ろになってなあ」の「3馬身」も、コーナー1つ分なので計算上ほぼ「正解」に近いことがわかる。

 勝負どころで3馬身や5馬身も損をすれば、結果に大きな影響を与えるのも納得できる。ただ、前走で距離損をしたからといって、今回は距離損なくまわってくるとは断言できない。毎度毎度同じような競馬をしている馬なら、距離損をするものとして予想するのが前提となり、必ずしも次が「買い」とは言えないのだ。
 と、これで終わってしまうとこういってしまうと、毎度のように外をまわしている騎手はアホ、という話になってしまうが、実際のところはそう単純なものではない。たとえば開催が進んでラチ沿いが荒れてきた場合。ラチ沿いを通ることによるスタミナのロスが3馬身(あるいはコーナー2つで0.9秒)以上になれば外を回した方が有利だ。また、コーナーがきつい競馬場で跳びの大きな差し馬なら、ラチ沿いをちょこちょこと周るより、大外から勢いをつけてまわってきた方が直線の伸びが良い、という可能性もある。ほかにも、他馬を気にする、直線でもたれる、などという癖があれば、馬群に突っ込むよりは外を伸び伸びと走らせた方が良く、しかも大外なら不利を受ける危険性が少ないなど、単純に距離損=マイナスとは言い切れない面はある。
 さらに、今回の「皐月賞→ダービー」を見れば、中山より東京は「勝負どころ」に含むコーナーの割合が減る(=直線が長い)ので、同じ外をまわす競馬をしても中山ほどは結果に影響を与えない可能性がある。しかも直線が長い分、直線だけ外に出す競馬でエンジンをかけるのが少々遅れても、(展開次第だが)最後の最後で届く可能性は小回りよりも高いように思える。もちろん、その競馬でも直線を斜めに走るのだから距離損はあるのだが、これはコーナーで外をまわすよりはロスが少ないのだ。今度は三角関数の問題。少々長くなってきたので、これは次回。どの程度の距離損があるのか計算してみたい。(つづく)

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